研究日誌
建築視察研修 2018年1月22日 東京
建築設計において、「温故知新」ということも新しい試みをするにあたって大切なことです。
現在世田谷区で進行中の再生工事(フル・リノベーション)の現場研修も兼ねて東京都内にある建築を視察しました。
■江戸東京たてもの園 東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)
江戸時代から昭和時代にかけ建てられた特徴的な建築を広い公園内に移築した建築博物館です。
またその時代の暮らしぶりも合わせて展示するなど生活の歴史も学ぶことが出来ます。
前川國男邸や昭和の歴史の転換点の舞台となった高橋是清邸なども移築されています。
昭和代表する建築家の住まいは日本的な材料を使いながらもモダニズム建築として高い完成度を視ることが出来ます。三井八郎右衛門邸や高橋是清邸は近代和風建築の材料、職人の技能共を示すものです。
■世田谷美術館 東京都世田谷区砧公園1−2
開館 1986年
設計 内井昭蔵建築設計事務所
設計者は「桜台コートビレッヂ」など近代建築的手法からアールトを経てライトの影響を感じる細部に有機的な形態を多用するようになった時期の代表作。
吹上御所へ至る過程が読み取れます。ポストモダンの時代性とも符合するところがある。近くには環八道路沿いに隈研吾出世作のM2(現在は斎場)もあります。
■世田谷美術館分館 向井潤吉アトリエ館
開館 1993年
設計 佐藤秀工務店
向井潤吉は民家を描いた洋画家でこの建物も日本の民家をモチーフに坂道に沿って建てられています。設計は木造邸宅を多く手がけた佐藤秀工務店の特徴をよく表しています。
世田谷美術館は市井の生活に身近な芸術を取り上げることを特長としていますが、地方出身者が多いであろう区民にとっても身近な田舎家をモチーフにした向井潤吉の絵画もまた身近な芸術と言えましょう。
■世田谷区役所庁舎
完成 1959年から1969年
設計 前川國男建築設計事務所
設計者は戦後の近代建築の巨匠に一人でありルコルビジュの弟子の一人です。
街の中にあって高低差も利用しつつピロティによって開放された敷地はいかめしい行政庁舎とは一線を画するものがあります。
残念ながら老朽化を理由にまもなく姿を消しますが、ヒューマンスケールの空間は区民はじめ建築を愛する人達に長く記憶されるでしょう。